田中敏幸研究室

慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科

〒223-8522 横浜市港北区日吉3-14-1

田中居室:26棟310A
学生居室:26棟309

研究テーマ
 医用画像解析  位相差顕微鏡画像解析 脳機能計測  X線CTの3次元再構成 
 GPS・室内測位 ジャイロ二輪車  顔の特徴量解析  その他の研究 

医用画像解析(病理画像診断)

田中研の研究分野のひとつとして、パターン計測(画像計測)があります。画像の一般的な処理だけでなく、画像の中から注目している対象物(がん細胞など)を抽出し、抽出した形状の特徴量を算出し、機械学習によって判別するという研究です。この研究分野の応用として、医用画像解析(病理診断)を行っています。主に扱っているのは、腺がん・子宮頸がんなどです。
腺がんの診断支援システム
田中研究室では、腺がん(胃がん、大腸がん、前立腺がん)などの診断支援システムを作成しています。異なった部位のがんですが、それぞれのがんの病変画像は非常によく似ています。体の細胞は工業用部品などのように規格化されていないので、同じ種類の細胞を取り出すだけでもかなりの技術が必要になります。また、部位によって判別の仕方が若干異なるので、類似した画像であっても別々にシステムを構成してかなければなりません。

以下に胃がんの軽度のものと重度のものを示しておきます。このくらい差があればわかりやすいのですが、判断に困るものが数多く存在します。病理医が速やかに判断できるようにするための支援システムの作成が最終目標です。

 
子宮頸がんの検診支援システム
近年、食生活の欧米化や女性の社会進出による生活環境の変化に伴い、日本人女性の子宮頸がんの患者数が増加しています。研究室では、子宮がんの検診に利用できる診断支援システムの構築をしています。子宮がん検診に訪れる人の95%は正常といわれています。しかし、検査技師および医師はそれら全ての細胞をチェックしなければなりません。正常細胞画像と悪性細胞画像を分類して医師が診断する時間を十分に取れるようにすれば、子宮がんの早期発見と早期治療につながると考えています。以下は、子宮がん検診で撮影される細胞画像です。

乳癌の診断支援システム
近年、食生活の欧米化や女性の社会進出による生活環境の変化に伴い、日本人女性の乳がん患者数が増加の傾向にあります。本研究室では、子宮がんの検診に利用できる診断支援システムの構築をしています。昨年は、免疫染色画像からたんぱく質の発現状況を自動的に解析して、乳がんの診断を行うシステムの作成を行っています。以下に、免疫染色された細胞画像を示します。

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位相差顕微鏡画像における細胞計測

創薬の研究では、培養細胞の状態を時間を追って解析する必要があります。現在普及している画像解析システムは、蛍光顕微鏡画像や明視野画像といわれるものです。画像そのもののコントラストがよく、色合いも十分なので解析システムを作るのには適しています。最近の研究で、レイザー光の出力が小さくなったといわれていますが、レイザー光そのものが細胞にとっては毒となりますので、レイザーを使わないシステムによる解析が望まれています。

近年、レイザーを使わない位相差顕微鏡というものが、培養細胞検査の分野で注目されています。しかし、位相差顕微鏡で得られる画像はコントラストが低く、画像解析には不向きです。田中研では、位相差顕微鏡を用いて、細胞分裂の状況などを自動的に観察するシステムを構築しています。いまのところの目標は、蛍光顕微鏡の解析精度に近づけることですが、かなり近い状況まできています。

現在は、培養細胞検査のためのシステムということで研究を進めていますが、iPS細胞の特徴量解析などでも利用できるのではないかと、検討を始めたところです。

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リハビリ時における脳機能計測

近年、脳卒中患者の増加にともない、その後のリハビリの需要が増えています。リハビリを行って比較的早く効果の現れる人と効果の出にくい人がいます。脳の損傷を受けた場所を、その回りの組織がどの程度補っているかで、リハビリの効果の違いがでるようです。脳機能を計測する際に用いられる装置として、下図左のMRIがよく知られていますが、検査中は体を固定しなければならないのでリハビリ時の脳機能を計測するのには不向きです。そこで、近年注目されているNIRSという装置を用いての脳機能計測を行っています。しかし、下の右に示すように、NIRSでは頭部表面のデータしか表すことができません。田中研究室では、NIRSのデータから脳内部の活性化状態を調べるための手法について研究しています。

リハビリ時の脳内部の状況がわかれば、次のステップとして、脳の損傷部位と活性化状態から、リハビリ患者ひとりひとりに適切な動作やリハビリ器具を提案できるのではないかと考えています。

このテーマは、リハビリ学会・リハビリ科の医師・理学療法士の方々との連携により、よりよいシステムを目指して研究をしています。

 

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X線CTの3次元再構成アルゴリズム

工業用X線CTシステム(傾斜型CTシステム)
工業用製品に対してX線CTを用いて非破壊検査する場合、X線源を近づけてできるだけ拡大率を上げるシステムが考案されています。このようなシステムでは、X線源を斜めにしたシステムが有効であることが知られているが、まだ十分な解析アルゴリズムがありません。田中研では、この傾斜型システムのための解析アルゴリズムについて研究を行っています。

  
医療用X線CTシステム
医療用のX線CTシステムはすでに多くの医療機関で利用されています。現行のシステムでは、X線の放射量が多いため、検査と検査の間にある程度の期間を設けなければなりません。田中研ではX線の放射量を減らしても現在と同等な画質を得ることのできるX線CTシステムの構築を目指して研究を行っています。

最近の検討から、放射線量を減らしたX線CTシステムは工業用にも利用できるということがわかりました。X線CTの大きな欠点として、装置を入れるための部屋の壁を重装備にしなければならないという問題がありました。これはX線量が多いためで、X線量を減らすことができれば、X線装置を入れる部屋そのものの工事が簡素化され、もっと普及しやすくなると思われます。
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GPS・室内測位

GPSおよび屋外の測位システム
GPSおよび屋外の測位システム(GLONAS, GALLELEO, QNSSなど)について基礎研究、応用研究を行っています。研究を始めた当初は、GPSの精度そのものに問題があり、簡易的な手法でどこまで精度を向上できるかということを研究課題としていました。また、精度だけでなく測位そのものができない場所も多かったことから、予測技術などを利用したアルゴリズムの開発を行いました。

近年では、GPSそのものの精度が向上し、その他のインフラも整備されてきたことから、精度に関連する基礎研究よりもどのような応用やサービスを考えるかといった研究課題になってきています。


室内測位
GPSやGLONASSは屋外での測位を行うシステムなので、屋内における測位は別の手法を考えなければなりません。最近注目されているのが、WiFi、無線LANなどを用いて室内の相対位置を測位する手法です。WiFi、無線LANは多くの施設でインフラ整備が整ってきましたので、非常に手軽に利用できる屋内測位システムとなります。ただし、屋内には障害物も多いので、障害物による影響を考慮したシステムを考えていかなければなりません。

また、屋外における測位から屋内の測位への切り替えを考慮したシームレス測位というものも、今後の研究室の研究課題になってくると思います。
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ジャイロ二輪車の走行制御

二輪車は静止時に倒れてしまいます。ジャイロを搭載することにより、静止時でも倒れないバイクの研究を行っています。二輪車が倒れそうになったとき、搭載しているジャイロ(コマ・フライホイール)を前後に倒すことによって二輪車が倒れる方向と逆の方向のトルクが発声するようにします。それをうまく制御していくと静止時でも二輪車が倒れなくなるという仕組みです。

この研究のもとになっているのは、1970年代から1980年代にかけて、私が学生のときの指導教授(佐藤力教授)の研究室で行われた研究です。当時は小型のUSBマイコンやMEMS技術・NANOテクノロジーなどの普及していない時期でしたので、傾斜センサなの度も全て手作りで、しかも制御装置は全て電子回路で作成していました。

いまは当時なかった技術や装置が全てそろいましたので、ディジタル化した新しいバイクを作成し、研究を始めました。アナログをディジタルにすることがメインでしたが、制御方式も全て変わったため、まだ十分な制御ができていませんが、近々にデモができるようにしたいと考えています。

  
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顔の特徴量解析

顔画像からの特性抽出
顔の特徴量を個人認証に用いる手法については多くの組織で研究されています。類似の研究テーマではありますが、顔の特徴量から個人を特定するのではなく、男女などの情報を抽出する手法について研究を進めています。二つのカテゴリーに分類するだけですが、それでは人はどこで男女を見分けているのか簡単には説明できません。見ればわかるというのはコンピュータでのアルゴリズムにするのは不可能です。一つ一つの特徴をコンピュータが理解できる特徴量に置き換えて、分析の手法を検討しなければなりません。最近はじめたテーマですが、人間の感覚をコンピュータに学習させるのは最近の非常に大きな研究分野のひとつとなっています。
顔のたるみの計測
顔のたるみ・むくみなどは、自分の顔を見ても感じることがあります。しかし、これをコンピュータで判断させる場合にはかなりの難しい課題となります。顔のたるむ・むくみというテーマは、最近の美容業界ではかなり注目されているテーマのひとつのようです。化粧品会社や製薬会社が作った商品が、たるみやむくみにどの程度有効かということは、人間の感覚で判断するしかありません。ここで、コンピュータと画像解析を利用したたるみ・むくみの判定システムができると、会社としても製品の効果をアピールしやすくなります。また、むくみの計測などについては、パーソナルヘルスケアという分野でも必要とされている計測システムなので、研究室としてもよいシステムの実現を目指して努力して行きたいと思います。
顔面神経麻痺計測
田中研究室の「顔の特徴量解析」のスタートは、顔面神経麻痺の研究から始まりました。表情運動を行ったときに、顔の左右の動きの違いから麻痺の程度を判断するというシステムです。二次元(画像)からの麻痺度の判別はかなりよいレベルに達しましたが、次のレベルでは三次元的な奥行きの要素を取り入れた診断システムが必要になりました。その段階で、この研究は休止状態になっており、現在は顔の三次元データ化やたるむ・むくみ計測のような研究課題に映っています。

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その他の研究

楽音からの自動採譜
信号処理の応用研究として、楽音からの自動採譜を行っています。基本的には周波数解析になりますが、実際のメロディーは必ずしも正確に音長が決まっているわけではありません。音の高さ・長さなどを正確に解析し、そのあとで判別分析などを行う必要もあります。これまでの研究で、ある程度正確にメロディーから採譜することができるようになりましたが、今後はどのような用途に利用するかによって、必要な機能が変わってきます。また、それにともない研究方針も変わってくると思います。

バイオメトリクス認証
田中研究室では、バイオメトリクス認証の研究も行っています。これまでに、指紋、虹彩、静脈などを用いたバイオメトリクス認証システム(アルゴリズム)の研究を行ってきました。画像処理の中でも特に、画像のマッチングに関する研究が中心になります。画像をマッチングさせたときの相関値から本人かどうかを判します。静脈などの形状は個人個人で全く違うといわれていますが、画像解析した結果の違いはほんのわずかです。そのわずかな違いから正確に認証を行わなければなりません。
現在、バイオメトリクス認証のテーマは休止した状況ですが、よいテーマがあったらまた始めたいと思っています。

めまいの計測
目が回っていると感じたとき、本当に目が回転しています。一般の人は回転量も少なくすぐに回復しますが、脳や三半規管に何らかの病気を持っている人はめまいの症状が続きます。めまいをしたときの眼球の回転方向としては、上下・左右と瞳孔の中心を回転軸とした回転があります。それぞれの回転の混ざり方によって、どこの部位に病気を持っているのかある程度特定できるようです。田中研究室では、三つの回転方向に対して、回転量を正確に求めるアルゴリズムを構築しました。現在、この研究課題は休止状態ですが、次のステップに向けて検討を続けています。

顔の三次元再構成
顔面神経麻痺の研究の項でも説明していますが、顔の三次元データ化を必要としているシステムは数多くあります。レーザーを利用することで高精度のデータ化を行うことができますが、田中研究室では撮影画像のみから三次元データ化を行う手法について研究を行いました。三次元データ化そのものの研究については現在休止中ですが、他のテーマで顔の三次元情報を用いています。

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